国税庁は、令和7年税制改正における基礎控除等の見直し等を踏まえた「令和7年分 年末調整のしかた」の動画を公開しました。https://www.youtube.com/watch?v=GtHqLmkTjz8
この動画を踏まえ、ここでは実際の年末調整事務の現場で留意すべき事項について簡単に解説していきます。
令和7年の年末調整は、基礎控除・給与所得控除の見直し、特定親族特別控除の創設、そして扶養親族等の所得要件の改正といった重要な税制改正が適用されるため、例年以上に慎重かつ正確な事務処理が求められます。
1. 主な改正点とその影響
| 改正点 概 要 | ||
| 基礎控除の見直し 合計所得金額に応じて控除額が変動 | ||
| 給与所得控除の見直し 最低保障額が55万円から65万円に引き上げ 特定親族特別控除の新設 19歳以上23歳未満の親族で、合計所得金額が58万円超123万円以下の特定親族 について、所得に応じた控除を新設 | ||
| 扶養親族等の所得緩和 扶養控除等の対象となる扶養親族の所得要件が、従来の48万円(給与収入103 万円)以下から58万円(給与収入123万円)以下に引き上げ |
この改正により、パート・アルバイト等の所得税が非課税となる「103万円の壁」が実質的に「160万円の壁」(基礎控除95万円+給与所得控除65万円=160万円)に変わるなど、従業員の税負担に大きな影響があります。
2. 年末調整事務の具体的な留意事項
従来の「基・配・所」申告書に「特定親族特別控除申告書」が統合され、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という新様式を使用します。そのため申告書の様式変更の確認と従業員への周知徹底が必要となります。
特に扶養控除や配偶者控除等の対象となる所得要件が緩和されたため、今年から新たに控除対象となる親族がいないか、従業員に確認を促すことが求められます。
この改正により、新たに扶養控除等の対象となる扶養親族等を有することとなった給与の支払を受ける人は、その旨を記載した「令和7年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を、給与の支払者に提出することとなります。
なお、給与の支払を受ける人は、この申告書を、原則として令和7年12月1日以後最初に給与の支払を受ける日の前日までに提出することとなりますが、年末調整を行う時までに申告書の提出があれば、その申告に基づいて年末調整を行うことができますので、給与の支払を受ける人に申告を忘れないよう周知することが必要です。
また「特定親族特別控除」については、19歳以上23歳未満の親族を扶養している従業員に対し、制度の概要と申告書への記入方法を個別に説明することが欠かせません。
年末調整においてこの控除の適用を受けようとする給与の支払を受ける人は、その年最後に給与の支払いを受ける日の前日までに「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を給与の支払者に提出することとなりますので、給与の支払を受ける人に申告を忘れないよう周知することが必要です。
基礎控除や各種控除の判定には、給与収入だけでなく、副業などを含めた合計所得金額の見積もりが不可欠です。従業員に正確な金額の見積もりを依頼し、申告書の記入ミスを防ぐようにしましょう。
3. まとめ
令和7年年末調整は、控除の対象範囲や申告書の様式が大きく変わるため、事務担当者にとっては大きな負担増となる可能性があります。国税庁が公表する最新の資料を基に、従業員への丁寧な説明と申告書の記入指導を徹底することが、スムーズで正確な年末調整を遂行するために必要不可欠となります。
<参照>
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2025/pdf/102.pdf