賃貸マンションを使った節税手法について、政府与党が見直しの検討に入ったという記事が報道されました。
記事によると、投資用のマンションなどを使って相続税を低く抑える手法が広がっているとし、政府税制調査会は相続時の不動産評価の手法を見直す検討に入ったとのことです。
この検討結果によっては、早ければ今月発表される税制改正大綱に盛り込まれることが想定されます。https://www.asahi.com/sp/articles/ASTCV3PTJTCVULFA01GM.html?iref=pc_business_top__n
ここではこの記事を踏まえ、不動産を用いることで相続税対策となる仕組みについて解説をしていきます。
不動産を用いる(購入する)ことが相続税対策となる主な理由は、現金や預貯金で保有する場合に比べて、相続税を計算する際の財産評価額が低くなる仕組みにあります。
この仕組みを理解するための主要なポイントをいくつか確認します。
1. 現金と不動産の相続税評価額の差
相続税の課税対象となる財産の価値は、それぞれの財産ごとに定められた方法で計算される「相続税評価額」に基づきます。
この相続税評価額については、原則「時価」に基づくこととされていますが、現金や預貯金の場合には相続開始時の残高でそのまま評価されます。一方不動産の場合には、実際の市場価格よりも低く評価されるのが一般的です。
例えば、1億円の現金の場合には相続税評価額も1億円となります。対して土地については国税庁が定める「路線価」や「倍率」に基づいて評価され、路線価は公示地価の概ね80%程度が目安とされています。
また建物については、市町村が定める「固定資産税評価額」に基づいて評価され、建築費の概ね50%〜70%程度の評価額となります。
つまり、1億円の現金をそのまま相続する代わりに、1億円相当の不動産に換えて相続すると、課税対象となる評価額を数千万円単位で圧縮できる可能性があり、結果として相続税が節税できるのです。
2. 賃貸物件にすることによるさらなる評価減
土地については、他人に貸し付けたり、その土地の上にアパートを建てて貸し付けた場合には、借地権割合などに基づき評価額は更に下がります。また建物については借家権割合(全国一律30%)を控除して評価されます。
これらが自己使用の場合と比較して低く評価される理由としては、所有者がその不動産を自由に利用したり売却したりすることが、賃借人の権利によって制限されるためです。
3. 借入金(ローン)の活用
金融機関からの借入金(ローン)を利用して不動産を購入した場合、その借入金残高はマイナスの財産として、相続財産全体の総額から差し引くことができます。
不動産を購入することで、相続税評価額の低い資産に変え、かつ、借入金というマイナスの資産を計上できるため、トータルで課税対象となる正味の遺産総額を大きく圧縮できます。
4. 特例による大幅な評価減
相続した不動産が特定の要件を満たす場合、「小規模宅地等の特例」などの特例を適用することで、さらに評価額を大幅に減額できます。
例えば居住用の宅地であれば、一定の要件を満たすことで、330平方メートルまでの部分について80%が減額されますし、他人に貸し付けている土地やアパートとして貸し付けている土地であれば、一定の要件を満たすことで、200平方メートルまでの部分につき50%が減額されます。
5. まとめ
上記のように、現金を不動産という「相続税評価額が低い資産」に変え、評価額を大幅に減額できる評価手法を組み合わせることで相続税対策として非常に有効となるのですが、この相続税対策については悪用したケースが従来から問題視されておりました。
区分所有マンションの評価手法については、令和6年1月1日から適用される個別通達にて一定の措置がなされましたが、今回改めて手立てされる可能性が出てきたというわけです。
ただ報道された記事によると、すべての不動産に対して評価手法の規制が入るわけではなく、相続開始前5年以内に取得した不動産や区分所有マンション・オフィスビルなどが対象となるようです。
このことからも、相続税対策として不動産を活用する場合には、計画的に早めの実行が必要になると言えるのでしょう。