相続税法第21条の3では、親や祖父母などの扶養義務者が、子や孫に対して「教育費や生活費として、通常必要と認められる範囲」で、必要な時に必要な分だけ渡すお金には、そもそも贈与税はかからないと定められています。
つまり孫が高校や大学に入学し、実際に学費を支払うタイミングで援助をする分には贈与税はかかりません。
ただこれだと、孫が幼くて学費がかかるのはまだ当分先という場合、高齢な祖父母から孫に教育資金としてまとまったお金を非課税で渡すことは難しいかもしれません。
このような場合に有効なのが、「教育資金の一括贈与」制度です。
1.教育資金の一括贈与とは?
この制度は、将来必要になるであろう子や孫の教育資金を、金融機関との一定の契約に基づき、先に一括で金融機関の専用口座に預け入れることで最大1,500万円まで非課税で贈与できる期間限定の特例制度です。
ただ令和8年度税制改正大綱でこの制度の期間延長が明記されませんでした。つまり令和8年3月31日をもって打ち切られることになります。
2.なぜ相続対策に有効なのか
教育資金の一括贈与は「相続対策」として非常に有効になると言われていますが、その理由としては最大1,500万円までの財産を生前に非課税で贈与でき、その分が相続税の課税対象から原則として外れるためです。
先ほど説明したように、「その都度」贈与では実際に学費を支払うタイミングでしか非課税で贈与できません。つまり高齢な祖父母からの援助を考えている場合、一度税金(相続税)が課された上で孫の学費に充てられます。
その点「一括贈与」は、最大1,500万円までが祖父母の相続財産から原則として外れるため、相続税の課税対象財産を減らすとともに、その分を非課税で将来の孫の学費に充てることができます。
ただこの制度を利用する場合、注意すべき点が幾つかあります。
3.教育資金一括贈与の注意点
⑴ 契約終了時の贈与税
もっとも注意すべき点が契約が終了したタイミングです。
一定の通学継続等の特例を除き、原則として子や孫(以下、「受贈者」といいます。)が30歳に達した時点で契約は終了します。このとき口座に残っている残額(教育資金支出額として使われなかった額を含み、以下、「管理残額」といいます。)については、その年の贈与税が課税されます。
つまり1,500万円フルに口座に入れて使い切れないと、最終的に高い税率の贈与税を払うことになり、本末転倒になる可能性があります。
⑵ 契約期間中に贈与者が亡くなった場合
契約期間中に贈与者が亡くなった場合で管理残額があるときには、受贈者が23歳未満であるなどの例外を除き、管理残額につき贈与者から相続したものとみなされ相続税がかかります。
なお孫への贈与が前提として相続税がかかる場合には、相続税の2割加算の対象になる点も注意が必要です。
このあたりの注意すべき点については、度々の税制改正で細かく変更がなされているため、詳しくは国税庁ホームページの以下のリンクをご確認下さい。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201304/pdf/0023004-114_02.pdf
4.まとめ
教育資金一括贈与制度は、祖父母が将来の孫の学費を確保して相続財産を減らしたいといった場合や、認知症になった後に備えたいといった明確な目的がある場合に非常に有効です。
特にまだ幼い孫が多くいる高齢な祖父母の場合、孫1人あたり最大で1,500万円まで非課税で教育資金を贈与できるところにこの制度の魅力があります。
ただこの制度は時限法であり、令和8年3月31日の契約をもって打ち切りになる模様です。
また前述したように、この制度の利用にあたっては注意すべき点が幾つか存在します。
次世代へのスムーズな資金の移転を検討されている方でこの制度の利用を検討されている場合には、制度の概要をしっかりと理解した上で、最寄りの金融機関で専用口座を開設する必要があります。