相続税対策を考える上で、二次相続を踏まえた綿密なシミュレーションを行うことが非常に重要になってきます。
二次相続を踏まえた遺産分割や申告内容とすることで、結果として税金負担が数千万円かわってくることもざらにあります。
今回は数次相続における一次相続の場面で、税制優遇措置の一つである「
「配偶者の税額軽減」については、相続税計算の場面では一般に使うことがセオリーとなっていますが、こと数次相続の場面においては敢えて使わないことで逆に節税できることがあるのです。
1.数次相続とは?
そもそも数次相続とは、相続が発生し遺産分割協議が成立する前に、次の相続が発生することをいいます。
父が亡くなり、その数か月後に立て続けに母が亡くなるような場合がこれに該当し、相続の現場では意外と目の当たりにする場面でもあります。
なお上記のように父→母の順に亡くなる場合においては、父が亡くなって開始する相続を「一次相続」、母が亡くなって開始する相続を「二次相続」とよんだりします。
2. 一般に二次相続では税金負担が重くなる
「配偶者の税額軽減」とは、亡くなった方の配偶者が遺産を引き継ぐ場合につき、遺産額の「1億6,000万円」または「法定相続分」のどちらか多い金額まで相続税がかからないという制度です。
相続税の計算で配偶者が優遇される理由としては、「夫婦が共同で築いた財産だから」という考え方や、配偶者が安心して老後生活を送れるようにといった「配偶者の生活保護」の観点から一般に説明されます。
一次相続で配偶者が財産を多く引き継げば、
二次相続では子どもだけが相続人となるため、この制度が使えず税額軽減の恩恵がありません。
また法定相続人の数が一人減る分、基礎控除額が少なくなります。
結果として二次相続では、配偶者自身の固有財産と一次相続で引き継いだ財産が合算され、
3.税制優遇措置を「敢えて使わない」ことで得られるメリット
一次相続で「配偶者の税額軽減」を敢えて使わないで配偶者についても相続税を負担させることで、二次相続における相続税計算上、一次相続の配偶者相続税負担額が「債務控除」として遺産総額から控除され、さらに「相次相続控除」の適用により一定額が税額から控除されます。
なお相次相続控除とは、10年以内に立て続けに相続が発生した際、同じ財産への二重課税を避けるため、前回の相続税の一部を今回の税額から差し引く制度です。相続人の税負担を軽減する目的で、相続税の計算において一定の控除額が差し引かれます。
つまり、一次相続で「配偶者の税額軽減」などの税制優遇措置を敢えて使わずに税金を多く計算した方が、二次相続で各種控除が使えて、結果としてトータルの税金負担が小さくなることがあるのです。
4.具体例で確認
ここで具体例を用いてその影響額について確認していきます。
家族構成は父・母・長男・長女の4人です。
父が亡くなった後1年以内に母が亡くなり、母が亡くなった時点で未だ父の遺産分割協議は成立していないものとします。
父の遺産は自宅6,000万円(内訳:土地5,000万円・家屋1,000万円)、金融資産(預貯金及び有価証券)が1億6,000万円です。また母の遺産は金融資産1億5,000万円(父から遺産を引き継ぐ前の金額)です。
自宅に対する小規模宅地等の特例は、母のみ適用できるものとします。
また各相続における相続人の遺産取得割合は、法定相続分とします。
この場合、一次相続で「配偶者の税額軽減」を使って相続税の計算をすると、一次相続及び二次相続合算したトータルの税金負担は6,670万円となります。
対して一次相続で「配偶者の税額軽減」を使わずに相続税の計算をすることで、一次相続及び二次相続合算したトータルの税金負担は6,130万円となります。
この事例においては、一次相続で「配偶者の税額軽減」を敢えて使わずに相続税の計算をした方がトータルの税金負担が540万円小さくなりました。
また今回の事例では、一次相続における配偶者の遺産取得割合を法定相続分(2分の1)としましたが、配偶者の取得割合を変えることで更に節税できることがあります。
二次相続における相続人が2人以上いる場合には、一次相続における配偶者の遺産取得割合を二次相続における相続人だけで自由に決めることができるため、遺産分割については複数のシミュレーションをしてみることが大切になってきます。
5.まとめ
今回は数次相続における一次相続の場面で、税制優遇措置の一つである「
ただすべての数次相続の場面でこのような結果となるわけではありません。
ケースとしては限定され、両親ともに多額の財産を有している場合などに顕著にこのような結果となる傾向にあります。
申告にあたっては決め打ちすることなく、綿密なシミュレーションをを踏まえることが重要になります。
一次相続で敢えて税制優遇措置を使わないという選択肢があることを覚えておきましょう。